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鏡の中には先程まで卒業アルバムで見ていたあの“松永 アキト”と瓜二つの男が立っていた。
何で、ぼくと同じ顔……。
鏡に映った顔を手で触れた瞬間、頭を鈍器で殴られたかのような頭痛が襲ってきた。
そして、頭の中に滝のように流れてくる映像や静止画の数々。
“僕”の記憶。
「あぁ、全て、思い出してしまった…」
出来ることならば思い出したくはなかった。
ぼくは確かにこの手で彼を殺した。
「そりゃあ、この手に感触残ってるわけだよな」
そうだ。ぼくは僕である彼を…。
「何で気付かなかったんだろう…。ぼくが松永 アキトだってことに」
松永 アキト(ぼく)は松永 アキト自身を殺した。
そう。ぼくは僕を殺した。
単位も上手く取れずに精神を病み、こうして死ぬこと……“自殺”を選んだ。
きっとぼくは未練があって幽霊になってしまったんだろう。心残りがあるとすれば両親だ。
両親にはうつ病のことを話していたし、少なくとも別れの言葉は言いたかった。
身体が薄らとだが、消えかけている。
僕は消えてしまう前に、と思いスマートフォンを手に取って母親に向けて電話を発信する。
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