66人が本棚に入れています
本棚に追加
/271ページ
「……世界なんて、どうだっていい! 勝手に終わればいい。俺が終わらせてしまえばいい! 俺がやりたいのは、世界を救う事なんかじゃない……!」
心の中で、ウジャウジャと蠢いていた何かが、一つにまとまったような気がした。
「俺は、お前を救いたい……! お前を救うことで、自分自身を救いたい……!」
新山が前に一度言っていた。目の前に浮き出た文字は、自分自身の心を表すものだ、と。
その前兆から導かれるように人の心に干渉し、人を救った気でいた。
しかし、いつだって救われたかったのは、自分だ。
幼いころに母親と別れ、父親に捨てられ、伯父と思っていた人物に裏切られて、ズタズタのボロボロにされてしまった、悲劇の主人公気取りの、自分だ。
自分の事しか考えてない。自分だけが、かわいい。
それの何がいけないのか。誰しもが、追い込まれた状況の中では、自分以外の存在なんて、どうでもいいと思うだろう。
「私を救う……? どうやって? 救われる必要のない人間をどうやって救うのですか!?」
「……必要ないって思ってるのはお前だけだ。自分の都合で世界を壊そう、なんて奴が、助けが必要ないなんてありえない」
「だったら、救ってみてくださいよ? ご自慢の文字化けの能力で!」
如月のその言葉で、初めて、この空間で文字化けが行えない事に気がつく。
最初のコメントを投稿しよう!