恋路崩壊―disappointed love―1

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「山下くんをイジメないの! はい! これ返してあげるから、あたしに数学の宿題貸して!」  「にこり」と悪魔的な笑みを浮かべる彼女の名前は(めぐり)くるり。その名の通り、眼がくるりとしており、毎日ポニーテイルで登校して来ている活発な女の子である。  真は嫌々ながら、宿題を完璧にこなした数学のノートを廻に手渡し、それと同時に古井に盗られるまで読んでいた本を彼女から受け取る。 「ありがとー! 数学までには返すからねー!」  そう言って、真の席の傍を走り去っていく彼女を不機嫌な表情で見ていた人物は、その表情のまま、本を持った男子生徒へと視線を移す。 「なんで、オレっちに貸さないであいつに貸すんだよ! 普通、逆だろ、逆!」 「どちらかと言うとお前より廻の方が面倒だから……かな……?」  真は夏休み前に一度、廻に宿題を見せるのを断ろうとした事があった。というよりも見せようか否か迷っていただけなのだが、一瞬にして、腕を背中へと持っていかれ、関節技を決められてしまうのだった。  つまり、真は弱肉強食の世界に負けたのである。  その記憶が呼び覚まされ、このままでは古井にも同じ行為をされるような気がしてきた為に口を開く。     
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