恋路崩壊―disappointed love―1

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「てか、お前ほどの実力があれば、数学の問題を解くのなんてチョロいだろ? 世界の中心の男なんだからさ。数学くらい朝飯前なんじゃないの?」  苦いものを無理やりに食べさせられたような表情をする古井。それに対して、彼の目の前にいる真は、してやったりと口元を少しだけ歪めてみせた。 「廻が写し終わった後に勝手に借りるから、別にいいよ!」  頬を膨らませながら、真の席から離れていく古井にそれ以上視線を向けることは無く、窓からの俯瞰風景に目を止める。  古井が自己中心を“演じていること”には気が付いていた。それが何かのきっかけで暴発してしまわないかと懸念してはいるものの、そこに足踏み込んでみようとは思わない。それは古井自身の問題であって、真が軽く踏み入っていい問題ではないからだ。  教室は三階に位置しており、今現在、彼が見ている俯瞰風景もそれなりの光景である。  この景色を見て、ある衝動に駆られる者もこの“学校”と言う場所においては決して少なくないだろう。いや、学校だけじゃない。会社。職場。人間関係。  それぞれ、“社会”というものは様々なストレスや悩みを抱えてしまう枠組みであるから。  真のノートを写す、教室で唯一のポニーテールの女子生徒、廻くるりのその行為が、ストレスや悩み、非日常を生み出す原因となる。     
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