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恋路崩壊―disappointed love―1
「……――こと! 真! ちゃんと聞いてるのか!」
目を瞑って闇の中へと意識を引き込まれそうになっていた真は目の前に座っていた人物の声によって、現実世界に引き戻される。そして、目の前にいる、母親の兄、つまりは真の伯父にあたる倉崎博則の顔を見ながら、自らの口元から垂れ落ちそうになっていた涎を袖で拭いた。
伯父の顔は髭を点々と生やして目つきの悪く、第一印象はとても怖いのだが、本当は優しい五十代のおじさんだった。
七階建てのマンションの七階に伯父と一緒に暮らす真。
3LDKの一室は二人で住むには広すぎる空間なのだが、伯父の仕事の関係上、書類や本を置く場所が必要な為、実質、1LDKと言っても過言ではなかった。
二人は今、机を挟んで向かい合っており、真の後ろにはベランダが。伯父の後ろにはキッチンがあり、真の部屋は彼の右に位置している。
キッチンを使っているのは殆どが真で、と言うか伯父がキッチンに立っている姿など一度も見たことが無い。
「今、お前寝ようとしてただろ! こっちは真剣に話してんだぞ!」
眉間にしわを寄せる伯父。
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