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だが、母の兄とも分からぬ存在の発言など、真には聞こえるはずもなく、鼻で笑う。
「他人が口を挟んでいいようなことじゃない。でしょ?」
「……ナニ言ってんだ?」
「伯父さんは、俺の本当の伯父さんじゃないって、そう言いたい」
望んでいた返答は、否定だった。
間違いだと、言ってほしかったのに、倉崎はただ、黙ったまま、目を見開いていた。
そこで気が付く。ああ、本当だったんだな、と。
何も言わないのは、肯定の動作と同じだ。
「誤解を解きたい? 他人には……あんたには無理に決まってるよ」
大切なモノが、地面に落ちて、粉々に砕け散ってしまったような気がした。
本当の父親のように接していた人物に、裏切られた。それは本当に?
「他人だからなんだよ……それで、お前と過ごした時間が無くなるわけじゃねえだろ? 本当の伯父じゃないからって、あっさり切れるもんじゃねえよ」
ゆっくりと、近づいてくる倉崎に、真の方は、足を徐々に退かせていく。
このまま、倉崎と触れ合ってしまえば、何もかもを受け入れなければならなくなる。それが無性に怖かった。
恐怖が、真と倉崎との距離を、縮めることを阻害する。
だから、彼はここから逃げ出すしかなかった。
「真! 待て!」
静止しようとする声も無視して、階段を駆け下りる。
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