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自分が向かっている学校の制服を着た男性。その姿をどこかで見た事があるような気がする。
いや、知らないわけがない。その男子学生は、自分と同じクラスの人間だ。
「……お前……山下真か?」
先に口を開いたのは男の方で、その尋ねかけに真は応えない。
「無視かよ……そりゃあそうだろうなぁ? 今回の事件、全部、お前の仕業なんだろ? なんたって、死人にできるわけがねえもんなー?」
死人という言葉に、引っ掛かりを覚えて、訝しげな表情で目の前の男を見る。
「なんだよ、知らねえの? 今日見つかったらしいぞ? あの倒壊した病院から――――古井新の死体がよ」
一瞬、目の前の男が何を言っているの理解できなかった。
あれは大分前の出来事のはずで、古井新の捜索も既に打ち切りとなっている。
未だに瓦礫の撤去作業が進められていることから、その途中で発見されたのか。
生きていると思っていた。電車が真っ黒な文字に襲われた時も、真っ先に彼の顔が浮かんだ。
『壊そう――――世界を』
その言葉を体現するべく、如月に唆されるままに、世界に復讐しようとしていると思っていた。
でも違う。如月は別の目的で、古井新を使った。
山下真に、世界を真っ黒に染めさせるために。
「なあ山下。お前を殺せば、俺は普通に戻れるか?」
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