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そうであればいいが、生き残ってしまった時のリスクを考えれば、今は抵抗した方が良さそうだ。
そうこうしているうちに、左手に本、右手に黒い刀を携えた男が、此方に向かってくる。
普久原のように今、本を持っているわけではないので、文字化けの能力は使えない。か?
棒立ちのままの真に、文字で形作られた刀が振るわれる。
しかし、その刃が彼の肌を切り裂き、赤い液体を噴き出させることはなかった。
黒い刀と真が触れ合う前に、ウジャウジャとした大量の虫のようなものが、割って入って、刀を受け止めてみせる。
真の前で、壁のように立ちはだかるそれは、全て文字で作られていた。
「なんだよ……それ……」
普久原は数歩後ろに下がると、気味が悪いような表情をした後、すぐに納得したようで、その存在を睨みつける。
「そうやって、世界も壊そうとしたんだな……? ふざけんなよ。俺の日常を壊しやがって」
「お前の日常は、文字化けができる時点で壊れてるだろ?」
それは尤もなことではあったが、普久原を逆撫でする言葉でしかない。
これ以上、普久原を怒らせてもメリットなどないが、勝手に口から出てしまった。
怒らせたところで、戦況に何の影響もない。
有利なのは依然として、全ての文字を自由に操れる、真の方だ。
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