意識暴走―insomnia―2

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 普久原もそうなる可能性があるのかもしれないが、その前に倒してしまえばいいだけの話だ。  真が冷静に分析している間にも、普久原は何度も刃を振るっていたが、真に届くことはなく、黒い文字によって完封されていた。  このまま時間をかけていても、自衛隊や警察官に駆けつけられて、厄介なことになると思った途端に、真の前に立ち塞がっていた文字たちが、一斉に、本を持った男子学生に襲い掛かった。  人一人が真っ黒に染まる光景をただ、ぼうっと見ていた真は、何事もなかったかのように学校に向けて歩き出す。  自分が狂っているのではない。狂っているのは、この世界だ。  文字化けという能力を使える人間がおかしいのではなく、それを認めない世界がおかしいだけだ。  そんな感情が脳裏に過ぎった時、ふと我に返って、動かしていた足を止めた。 「今……なに考えて……」  自分の中の怖いナニカが、自分を支配してしまいそうな感覚に陥る。  それは恐らく、勘違いなどではない。確かに、それは存在し、現実となって、目の前に現れる。 「……文字……?」  急に暗転した光景に、真っ黒い炭の文字を見た。  三百六十度、全てを文字に包まれて、何も見えなくなる。  同時に一発の銃声が聞こえ、暗闇の景色は一瞬にして、元に戻った。     
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