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意識暴走―insomnia―3
世界が終わる。眠れば、世界は終わってしまう。
自分の倒れこんだ地面が、生暖かくなっていくのが分かり、同時に心地良くもなっていく。
このまま瞼を閉じれれば、どんなに楽なのだろう、と思う。
何故、世界の為に自分がこんなにも苦しまなければならないのか。
薄っすらとした目の前の光景を、赤い液体が侵食し始める。
地面に落ちた一本の煙草の吸殻が飲み込まれていく。
それは、世界が真っ黒な文字に覆われていく風景に似ていた。
「……ちがう」
確かに似ていたが、真はある事に気が付いて、心中での発言を声に出して、否定してみせる。
『――――眠れ』
その声と共に、目の前の景色が真っ黒に包まれ、銃弾が腹を貫いた。
地面に倒れ、傷口から溢れ出す血液が、彼を中心として広がっていく。
そう。似ているのは、この光景だった。
地面に捨てられ、血に塗れた煙草の吸殻は、自分自身の姿と合致していた。
涙で目の前の視界が滲んでいく。
「眠るかよ……!」
文字で視界を包んだのは、銃で自分を撃ったのは、あの男で間違いないだろう。
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