意識暴走―insomnia―3

1/11

65人が本棚に入れています
本棚に追加
/271ページ

意識暴走―insomnia―3

 世界が終わる。眠れば、世界は終わってしまう。  自分の倒れこんだ地面が、生暖かくなっていくのが分かり、同時に心地良くもなっていく。  このまま瞼を閉じれれば、どんなに楽なのだろう、と思う。  何故、世界の為に自分がこんなにも苦しまなければならないのか。  薄っすらとした目の前の光景を、赤い液体が侵食し始める。  地面に落ちた一本の煙草の吸殻が飲み込まれていく。  それは、世界が真っ黒な文字に覆われていく風景に似ていた。 「……ちがう」  確かに似ていたが、(まこと)はある事に気が付いて、心中での発言を声に出して、否定してみせる。 『――――眠れ』  その声と共に、目の前の景色が真っ黒に包まれ、銃弾が腹を貫いた。  地面に倒れ、傷口から溢れ出す血液が、彼を中心として広がっていく。  そう。似ているのは、この光景だった。  地面に捨てられ、血に塗れた煙草の吸殻は、自分自身の姿と合致していた。  涙で目の前の視界が滲んでいく。 「眠るかよ……!」  文字で視界を包んだのは、銃で自分を撃ったのは、あの男で間違いないだろう。     
/271ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加