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「ごめん。あまりにもおじさんの話が長いから、ちょっと寝てた。それで、何の話だったっけ?」
真剣に甥の事を考えて話をしていた倉崎だったのだが、その一言によってさっきまでの姿勢を根こそぎどこかへと持っていかれてしまう。しかし、今までにしていた話を投げやりにするにはいかず、もう一度、話をし始める。
「だから! 文系と理系、どっちにするのかって話だ!」
十月の初め。夏の暑さは治まって、秋の寒さをちらつかせるこの時期。
真の高校ではつい最近、二学期の中間考査が終わったばかりである。
そして、担任の先生から配られた重要なプリント、今まさに机上にあるプリントは中間考査の成績表ではない。
そのプリントには『理系』と『文系』の文字と、文系ならば選択しなければならない『世界史』と『日本史』の文字が印刷されており、それは明日までに提出しなければならなかった。
通常、再生紙を活用しがちな真の高校でもこのプリントだけは本当に重要なようで、再生紙ではなかった。
「これで人生が決まるって言っても過言じゃないんだぞ!」
「分かってるよ。だから、こうして顔を突き合わせて真剣に話しているんでしょ?」
真剣な眼差しを自分に向ける伯父を、安心させるように「にこり」と微笑んでみせる。
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