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二学期の中間考査がまだ終わっておらず、夏休みが終わったばかりの九月初め。まだ、秋には程遠いような暑さが残っているこの時期。
真は夏休み前にある事を引き受けてしまった為、いつもよりも足取り重く、駅から学校へと向かう。
引き受けなければ良かったのだ、と言われれば、返す言葉も無い。だが、彼は何事も断る事ができない性格だった。
夏休み初めの課外のHRの際に学園祭の委員を決めなければならならなかった。しかし、そんな面倒くさいものに立候補する者は誰もおらず、担任の教師は迷惑にも真にやってみないか、と勧めるのだった。
そして、断る事もできずに今日も放課後、残ってしなければならないことがある。
当日の出店の内容についてはクラス内で話し合っており、その提案書を放課後書かなければならない。さらにはその提案書が到底通るとは思えないのが、彼のやる気を殺いでいる一つの要因でもあった。
溜息を吐きながら、自分の所属している一年一二組の教室へと入り、窓側の一番奥の列、その列の後ろから二番目の席の前に至る。
「ヨっす!」
重い鞄を床に置いて、席に着いた真の前に一人の男子生徒が姿を見せる。
髪の毛の殆どがくるりと円を描いている男子はその髪と同様に性格も曲がっている。
古井新。
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