恋路崩壊―disappointed love―1

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 苗字と名前が真逆の意味である男子は、高校に入学すると同時に行われたオリエンテーション合宿で、真が初めて仲良くなった人物だった。  そんな自分の目の前にいる友人を無視して真は、鞄の中から三百ページほどの文庫本を手にし、黙々と読み始める。  無視した理由は古井の曲がっている性格にある。 「ちょっとー! オレっちの存在を意識しすぎたせいで、現実逃避に走らないでくれるかな? オレっちもそこまで意識されちゃうと困るんだよねー。まあ、オレっちが神々しすぎてぇ、直視できないって言う真っちのそんな気持ちも物凄く分かるんだけど、それでも直視せざるを得ない存在がオレっちだよね!」  右手の親指を立てて見せる友人の発言に耳を傾けながらも、本の世界に意識を持っていかれているふりをする。  それが古井に見抜かれていたのか否かは定かではないが、彼は額に右手の指を当て、「やれやれ」と首を横に振る。  先の発言からも分かるように彼の性格は曲がっている。  自分が世界の中心人物だと思っている。  そんな事を思うのは、この年頃ならば、全員とまではいかないにもそれなりの人に共通するものであるという反論が上がるだろう。しかし、彼は自分の周りの全ての事象は自分の為に起こっていると思っているのであり、良く言えば、極度なポジティブ。悪く言えば、極度な自己中心なのである。     
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