65人が本棚に入れています
本棚に追加
これ以上、自分の席の前にいられると本を読むのに支障をきたすと考えた結果、真は本を閉じて、彼との会話を試みる。
「なんか用?」
大方の予想はついていたのだが、あえて尋ねてみた。
質問を投げかけたのは、自らの駄目な性格を変える試練を作り出す為だ。
「昨日の数学の宿題――」
「嫌だ」
相手が要求を最後まで告げる前に断ること。それが、彼が考えた自分の断れない性格を打開する策だ。それは今まさに友人に対しては成功した。
ほっと安堵の息を吐く。その隙に手に持っていた本を目の前の天然パーマに奪われてしまった。
「返して欲しかったら、オレっちに数学の宿題を貸すしかないよー? というかオレっちは世界の中心なんだから、オレっちの言うこと聞けないはずがないよね!」
「にひひっ」と笑い、本を持った手を天然パーマの頭上に上げる。
真が数学の宿題を諦めて渡そうかと思っていたその時、古井の背後から同じクラスの女子生徒が近づいてきていることを確認し、深く溜息を吐いた。
その瞬間、古井の手の中にあった文庫本が背後から接近していた女子の手によって、奪い取られてしまう。
「え? あれ?」
文庫本が自分の手の中から無くなり、後ろを振り向こうとした彼の頭はその文庫本の角によって叩かれる。
「うわっ! 角はやめろよ!」
最初のコメントを投稿しよう!