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「よくある話なんです」
青年に勧められた椅子に座り、少女は話し始める。
クラスの何人かから嫌がらせされていること。無視や荷物がなくなることはまだ我慢できた。でも、
「体育の着替えのとき、写真撮られて。ばら撒くって……」
「そして、金銭の要求?」
「はい……」
なるほどねぇ、と青年は呟く。
「まあ、よくある話ではあるね」
そして立ち上がり、簡単に流された少女が不満げに口を開くのを、
「本を探しやすい」
微笑みとともに吐き出した言葉で黙らせたり
「君は選べるよ」
何冊かの本を棚から抜き出し、
「この場を耐えぬく盾を手に入れるか」
一冊ずつ置いていく。
「彼らを叩き潰す剣を手に入れるか、この場所から抜け出す足を手に入れるか、すべてから目をそらすことだってできる」
青年は少女を見て、微笑んだ。
「さあ、君は何を望む?」
「わたし、は……」
今の状況をどうにかしたい。それ以上に、
「あいつらに、やり返したいっ」
やられっぱなしなんて、嫌だ。
「そう、望むのは剣だね」
言うと青年は、少女に一冊の本を手渡した。
黒い表紙の本。手に吸い付くような不思議な感触がする。
「これは……」
「オマジナイの本だよ」
「は?」
「バカにしてるわけじゃない。第一ここまできた君が、マジナイを否定するのはおかしくないかい?」
「そうかもしれないけど……」
「これを書いたのは魔女。少なくとも本人は自分を魔女だと思っているひと。その魔女が熱意を込めて書いた本だよ。もはやそれは、マジナイというより、魔術かもね」
少女は手の中の黒い本を見下ろす。
そうだ、もともと、信じていたわけではないのだ。この本屋を。ただ、うまく頼れればラッキーと思っただけで……。
「これ、いくらですか?」
そして少女は、少々手痛い出費と引換に、その本を手に入れた。
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