絶頂

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『大地、絶好調だな!』と俺の肩を叩く林。 『一流の美声に声量。そして音域の広さ。お前には特に期待してるぞ!』 『あはは! 任せてください』 拳を胸に当て笑顔で返す俺。 『大地は本当に器用よね』と桃子が羨む。 『俺もお前の様になりたいわ、そしてチヤホヤされてぇなーー』 バス担当で天然パーマの戸田。 『何言ってんだよ』 俺は戸田の天パを更にくしゃくしゃにする。 『ははーー。広校合唱部の不動のエース、大地様ーー。私達を優勝へ導いてくだされぇぃ』 白石咲が俺にお辞儀をする。 『ははーー』 戸田、桃子、石井郁美も咲に続く。 『恥かしいからやめろよ』 雫がぷぷっと笑う。 このモデル体型の美女はアルト担当の白石咲。そして、短めの丈のスカートに茶髪が石井郁美。担当はソプラノ。 咳払いが聞こえる。色白で高身長にメガネの門前輝。担当はテノール。 『次は俺達三年最後の大会だな』 硬い表情で語る門前。門前につられ、引き締まった表情で頷く俺達。 『今年の大会開催校は広校だ。去年涙を飲んだ先輩達の分も必ず優勝しよう!』 続けて門前が意気込む。 『うん!』今度は深く頷く俺達。 『そして、俺は名門音楽大学に必ず進学できるよう、大会でアピールするぞーー!』 柔らかな表情に変わる門前。 『大地がいるから大丈夫だな』 俺の肩に手を乗せながらニコッとする戸田。 『大地がいるだけで安心するよね』 雫が微笑む。 突然、咳き込む戸田。 『風邪?』心配する郁美。 『こえ……出しすぎかも』苦悶の表情の戸田。 『大会一ヶ月前で練習時間過度に多くなってるからね』と桃子が言う。 俺は戸田の様子をじっと見て何となく気付いた。 『筋肉疲れもあるかもな。頭板状筋をマッサージすると解れて声が楽に出るようになるよ』 怪訝な顔をする戸田とメンバー。 『首の後ろにある筋肉だよ』 俺は自分の頭板状筋を指差す。 『指圧したり。ほぐしたり。こんな感じ』 懐疑の念を抱きながら、恐る恐る俺の真似をする戸田。 『ん? なんか。いい。感じ。大地! すごいなお前』 『ほんとーー。なにこれ気持ちいい』 雫、咲、郁美も戸田に続き、首の筋肉をほぐす。 『大地はやっぱり歌のプロフェショナルね』 郁美が褒めちぎる。 咲が再び、ははーー。と俺に深々とお辞儀をする。 『だから。やめろよ』 『ははは』
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