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「…し坊」「おい、とし坊」
「えっ?何?」
「いっちゃりのおっちゃん来たから、挨拶しに降りてこい」
「やったー!いっちゃりのおっちゃんきたん?」
とし坊は二階まで迎えに来た父を置いて急いで一階に駆け下りた。
「おっちゃーん」
もともと人懐っこい性格だったが、このいっちゃりのおっちゃんは特にお気に入りだった。
平日の朝っぱらから当たり前のようにやって来るのだから今思えばマトモな仕事をしていたとは思えない
「おぉ!とし坊!元気にしてたか?今日はな、とし坊が前に欲しい言うてた鉄砲買うてきたったぞ」
「うそーやったー!後で見るわ!あのなぁ、おっちゃん僕な自転車乗れるようになってん」
好きな人が来たときはいつもこうだ、
とし坊の目にはいっちゃりが自慢げに出したプレゼントも、道端の石ころと同じ、自分の話をしたいのだ。兎に角褒めてほしい、認めてほしい、承認欲求が僕の一番の原動力なのだ。
「ほんまか!ほんなら後でおっちゃんに見してくれや!」
「今見てや!今!なぁ今!」
「トシイ、ワガママ言うな!お父さんと、いっちゃりのおっちゃん今から話あるねん、挨拶終わったら外行って遊んでこい!」
家族が、少し怒って言うときはとし坊ではなく、トシイと呼ぶとし坊はそれを理解している…
「わかった!おっちゃん後で遊んでなぁ」
「おう、後でな」
いっちゃりはいつも笑顔で、よい返事をくれる。そんなところが好きだった。
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