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「だから、こんなになるなんて思ってなかった」
雲の隙間から差し込んだ月明かりが彼女の頬を伝う一筋の涙を照らした。
僕はその頬の涙を手で拭った。
「私も、久瀬くんが好きです」
頬を赤く染め、か細い声で、けれどはっきりとそう言った。
「はは、夢みたいだ…」
「久瀬くんも泣くんだ」
今度は彼女が僕の頬の涙を拭ってくれた。
「これからよろしくね、優馬くん」
「こちらこそ、よろしく星乃」
僕はこのときのことを一生忘れない。
天体観測が終わって、体育館に戻り、和樹に屋上でのことを話した。
「よかったな、優馬」
和樹は自分のことのように喜んでくれた。
「ありがとな、和樹」
「優馬の落ち込む姿が見れなくて残念だよ」
「お前、俺の感謝を返せよ!」
「うるせーリア充が!」
和樹は文句を言いながらバシバシと僕の背中を叩いた。
そのとき、ポケットの携帯が振動した。
見てみると、星乃からのメッセージだった。連絡先は屋上で交換した。
『おやすみなさい』
こんなたった一言の短い何気ないメッセージに顔がにやけてしまう僕はおかしいのだろうか?
好きな人が自分を好きだという事実だけでこんなにうれしくなることを初めて知った。
それを教えてくれたのは星乃だ。これからこの想いを忘れずに付き合っていこう。
僕も『おやすみ』とメッセージを送って、携帯を閉じた。
~終~
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