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皇室に嫁いだ女性を自分の友だちかのように言っていた独り言。その違和感を大人になっても覚えていて、違和感の原因が母が嘘をついていたからだということに気付き、そこから、「もしかしたら母は嘘つきな人間だったのかも知れない」と思い始め、するとどんどん芋づる式に母がついた嘘らしきものが思い出されてきた。他にもたとえば――
母は霊感があり、色々な人からよく相談をされる。ハンドバッグなど、相談相手の持ち物に触れるだけで、その人の悩みがわかる。また、祖母(母の母親)も非常に霊感が強い。
二十代の頃、初恋の相手がある日、明日、一人で海に行くと言い出した。そのとき母はなぜか「この人もしかしたらもう帰ってこないかも知れない」と思った。翌日、相手は高波に飲まれ帰らぬ人となった。母は、自分が「この人もしかしたらもう帰ってこないかも知れない」と思ったからそれが事実になってしまったんだと思い、苦しんだ。
母は福岡出身のとある有名男性デュオの一人と高校が同じで、告白されたことがあった(付き合いはしなかった)。母が大人になったある日、ラジオでその男性が初恋の相手として母のことを喋った。母にラジオ出演のオファーも来たが断った。
母は幼少の頃とても貧しく、祖母が引くリアカーの後ろに乗って、換金のために一緒に空き缶や空き瓶を拾って回る暮らしを送っていた。
――これらは、明確な根拠がないので、嘘かどうかは定かではない。当然、事実かも知れない。もし事実だったらこういう風に引き合いに出してしまって申し訳ないが、ただ、今の僕はどうしても、これらが事実だとは思えない。
母がつく嘘は、皇室の件から考えるに、どうやら「自分が特別な存在に見えるもの」という傾向がありそうだ、と僕は思っている。(もう一つの傾向は、言わずもがな「僕を自分の思い通りに動かすための嘘」である)
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