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魔法使いの書店員
書店とはどんなところか?
常識的に答えるなら、本を売って商売をしているところ、となるだろう。
書店員である野村則秀も、さすがにそんなことは分かっている。
分かっているからこそ、一人夜道を歩きながら、どうすればより本が売れるようになるかを考えているのだ。
この三月に大学を卒業した則秀は、四月から文栄堂という小さな書店で働き始め、既に三ヶ月が過ぎていた。
地方の小規模書店、あるいは書店業界全体が直面しているように、文栄堂の経営状況は右肩下がりを続けている。このままいけば、長くて十年ももたないだろうことは、則秀にも簡単に予想がついている。
だから則秀は、文栄堂のお客を増やし、経営状況を回復させる手立てを考えているわけだが、そんなものがそう簡単に思い浮かぶわけもなかった。
ネット販売の普及、価格競争のできない書籍の市場、さらには電子書籍の登場と、書店での買い物どころか紙の本を買う必要性がなくなりつつある今、その状況をひっくり返すことは端的に言って難題だ。
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