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続けて由美の前を通る。
お色直しで着たピンクのショート丈のドレスが由美の綺麗な脚のせいで、妙に艶っぽい。
デコルテの開きも広く、目のやり場に困ってしまう。
「月ちゃーん、今日は本当にありがとぉー。
えーっと、あとぉ…」
「二次会の受付けでしょ?
お任せ下さい」
「そう、それっ。
アコとかミコとか育ちゃんとか使ってね。
手伝うようお願いしてあるから」
「うん」
由美から差し出されたドルチェを笑顔で受け取り、健太郎の前に差し掛かる。
健太郎と目が合った。何年振りだろう。
懐かしいような、不思議な感覚だ。
「神代さん、今日はありがとう。
2次会も受付けしてくれるって……、なんかごめんね」
神代さん、か。
ふふ。そうだよね。
でも、“なんかごめんね” って、
“なんか” って、何?
…ムズムズする。
「いえいえ、由美のためですから」
笑顔で健太郎に答えたとき、一瞬由美と目が合った。
晩秋の頃、実家の回りでよく見た霜柱。
その無色の氷の冷たさが、由美の瞳に一瞬浮かんで、……消えた。
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