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◇
「望ちゃん、いいね、振り袖。
受付に箔がつくわ」
「前から着てみたかったんですけど、なかなか実行に移せなくて。
ラストチャンスなので重い腰を上げました」
「あ、そっか。
望ちゃん、秋に結婚するから、振り袖着るなら今しかないんだ」
「そうなんです。
育子さんもそのときどうですか?
ワンピース姿もシックで素敵ですけど」
「私が振り袖?!
ないわ~。柄じゃない。
未婚だけど、黒留袖の方が似合うって」
「ぅぐっ」
「変な笑い方しない!
そろそろお客さん、並び始めるんじゃない?
悟、新郎チームも準備いい? 」
「いつでも大丈夫だよ。
でも俺も育子の振り袖姿、見てみたいな。
マイク持たせば演歌歌手---」
ドコン!
「ってぇ!! グーパンチかよ」
「失礼なっ! 」
とっとと結婚すれば、振り袖の選択肢なんてなくなるんだよ!
誰のせいでこんな会話になったのか、わかってんのか?!
……と育子は思ったが、もちろん口にしない。
「木村さん、育子さん、ご静粛に」
「「……すみませーんっ」」
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