: 披露宴 2nd :

2/2
1442人が本棚に入れています
本棚に追加
/57ページ
  進行の声に合わせ会場の扉が開くと、そこに新郎新婦が登場した。 スポットライトがあるわけではないのに、 初夏のきらめきを全て集めている二人に、「ぅわぁ」というため息が漏れる。 アコは式でもうっとりさせられたけど、腕を組み歩き始める二人に、またうっとりした。 「でも私……、由美の二次会で月子をおんぶしたときの新郎、きちんと見てなかったんだよね」 アコの言葉にミコが目を丸くする。 「ウソ…!  この3人も由美の二次会にいたから、あのおんぶ、見てるよ。  月子が超絶イケメンに連れてかれたって騒いだじゃん」 あのときアコは、月子が思いを寄せてるという “藤森主任” を探すのに夢中で、佐伯智久のことを見てなかった。 アコがあのあと月子と連絡を取ったとき、 月子から、藤森とは結局うまく行かなかったことを聞いた。 理由を尋ねると、健太郎に引き続き、藤森も由美の毒牙に掛かったことを遠回しに言われた。 そのときアコは、ガコーンと頭に何か打ち込まれたかのような衝撃を覚えた。 月子が可哀想なのと、 理由を聞いたことで、また月子を傷付けてしまったと、深く後悔したのだ。 まさかその衝撃の裏で、 月子が新しい恋を始めていたなんて、アコは全く気付かなかった。 アコは新郎新婦を見ながら、 『後悔して損した』 と思ったけど、 月子の幸せそうな顔を見て、本当に良かったと泣きそうになった。 そう言えば、あの “藤森主任” はどうしたんだろう。 アコは席次表をもう一度確認したが、名前は見付からなかった。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!