小暮マルコス洋太

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駅に向かいながら、山咲さんについて考えていた。 俺達の暮らすあの家は『カーサセグレート』と言うらしい。 イタリア語の、家と秘密をくっ付けただけ、何となく響きがいいだろう。 そう説明されたのは、書類に書く住所を確認した時だ。 秘密だらけなのは、家じゃなくて、山咲さんだ。 なぜいつも家に居るのか? 仕事は何をしてるのか? あの立派な家に、家族はいないのか? やたらと羽振りが良いのは? 考えるだけ無駄、解る筈がない。 本当に知りたければ、聞けばいい。 知った所で、何かが変わる訳でもない。 そう思うのに、それをしようとは思わない。 不思議な魅力を持っているあの人について、また考えていた。
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