山咲圭介という男

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退職して1ヶ月過ぎたが、仕事の決まらない俺は、転職情報を眺めながら、時間をもて余していた。 マルコスとの関係は、何となく続けている。 あれ以来、付き合おうとは言って来ない。 接客業のマルコスと会うのは、平日の昼間で、皆が働いている時間に、獣のように交わっている。 躰が、アイツの形を覚え始めていることに、俺自身も気付いてはいて、上手く言えないが、時々不安定な気持ちになる。 ノックの音がして、扉の外から声がかかる。 「ミツ?ちょっと付き合ってくんね?」 ドアを開けて、スーツ姿の圭さんに、固まったまま見惚れた。 「どうしたんですか?スーツなんて…。」 「ん~?人に会わなきゃいけなくてさ。  窮屈だけど、仕方なくてね。  悪いんだけど、ミツもスーツ着用で。  俺の秘書的なポジションね。」 「良いですけど、どこに行くんですか?」 「ん~?会食?  30分後、出られる?」
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