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「わー……入りたくねぇ」
とまあ、そんな行き当たりばったりで向かった本屋は新しさとは無縁のような扉の向こう側だった。でも来てしまったのだから入るしかない。
モトキはずっしりとした抵抗感を感じながら扉を開く。
「……え」
そこにあったのは、広々とした清潔な室内。涼しい空気。カランと鳴り響いた鈴の音。外で感じた印象とは真逆の本屋だった。
「おや、いらっしゃい」
「……あ……えと、お邪魔しま、す?」
「お邪魔なんて……初めてのお客様にそんなこと思わないわよ」
「初めて?」
「ええ……なんでかしらね。開店して暫くたつのだけれどいらっしゃらなかったのよ」
「そ、ソウデスカ」
それはたぶん。たぶんじゃなくほぼ絶対的に外見のせいだと思うとはモトキには言えなかった。
店主は初老の女性で、きっと若いころはとても綺麗だったんだろうなと思える顔つきをしていた。しぐさも上品で。もしかしたらどこかのお嬢様なのかもしれない。それだったら道楽のようなこの店の感じもよくわかる。
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