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本来ならイルカは大体群れで行動し生活する、一人で行動する奴もいるが大抵は群れと遭遇する確率が高く、そのまま一緒に行動するらしい。
しかしこいつは一匹だった。しかも弱っている。
「群れとはぐれたのか?」
「ピー」
さっきと同じ感覚がした。
その瞬間俺は家に舞い戻った。父親に出くわさないように釣り道具一式を引っ張り出して、懐中電灯を確認してからまた走り出した。
イルカはまだそこにいた。
いつものポイントで懐中電灯を漁火の代わりにして釣りをする。
新月だったことが功を奏した。入れ食い状態だった。
しかしこいつは全て食い尽くしたのだった。今思えば、これだけ食うならば海の豚でも仕方がないかもしれない。
「キュー!」
満足そうに鳴くイルカに近づく、そのイルカは白い砂浜を少し赤く染めていた、どこかで怪我でもしたのだろうか?
「じゃあ、後は自炊してくれよな。」
さすがに面倒は見切れないなと思って帰った。
しかし次の日、そいつはまだ白い砂浜を住みかとしていた。
「キュー!キュー!」
俺は気付いていないふりをしながら一日を終える。
次の日もまたいた、今回は近づいてみる。
その次の日もいた、話しかけると鳴き声が返ってくる。
また次の日も、触ってみるとツヤツヤだ。
ずっとそいつはそこにいた、俺は諦めたのだった。
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