月に照らされて

2/6
前へ
/6ページ
次へ
本来ならイルカは大体群れで行動し生活する、一人で行動する奴もいるが大抵は群れと遭遇する確率が高く、そのまま一緒に行動するらしい。 しかしこいつは一匹だった。しかも弱っている。 「群れとはぐれたのか?」 「ピー」 さっきと同じ感覚がした。 その瞬間俺は家に舞い戻った。父親に出くわさないように釣り道具一式を引っ張り出して、懐中電灯を確認してからまた走り出した。 イルカはまだそこにいた。 いつものポイントで懐中電灯を漁火の代わりにして釣りをする。 新月だったことが功を奏した。入れ食い状態だった。 しかしこいつは全て食い尽くしたのだった。今思えば、これだけ食うならば海の豚でも仕方がないかもしれない。 「キュー!」 満足そうに鳴くイルカに近づく、そのイルカは白い砂浜を少し赤く染めていた、どこかで怪我でもしたのだろうか? 「じゃあ、後は自炊してくれよな。」 さすがに面倒は見切れないなと思って帰った。 しかし次の日、そいつはまだ白い砂浜を住みかとしていた。 「キュー!キュー!」 俺は気付いていないふりをしながら一日を終える。 次の日もまたいた、今回は近づいてみる。 その次の日もいた、話しかけると鳴き声が返ってくる。 また次の日も、触ってみるとツヤツヤだ。 ずっとそいつはそこにいた、俺は諦めたのだった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加