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浮かぶ事が出来るようになってから、俺はよくイルカと海に出た。
今思えば、イルカと一緒に出ていく姿を見られないはずがなかった。
「お前、何か隠し事していないか?」
父親にいきなりそう言われた。
「別に何も隠してないけど?」
「そうか、それとそろそろ初乗りと行くか?」
あれほどまで遠ざけていた乗船許可がいきなり下りた。
「いや、もう少し先で良いよ。」
「そうか、この季節はイルカの群れが見られるぞ。」
そのことを聞いて、俺は嫌な予感がした。
「いや、まだ大丈夫。」
俺は断って白い砂浜に向かって走った。
群れと出会ったら高確率で一緒に行動する。
その図鑑の一文が俺の足を進ませる。急げ急げと鞭を打つ。
白い砂浜についた。あいつは。
「キュー!」
鳴き声が聞こえる、あいつは認識してくれたのに、俺は認識が出来ない。
「おい、いるのか!どこにいるんだ!」
転んだ。いつものツヤヤかな肌が合った、ヒレにも傷の痕があった。
「まだいたのか!」
「キュー!キュー!」
いつも通り答えてくれたのか。
さよならを言っていたのか。
今でも俺にはわからない。
月はもう満ちかけていた。
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