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月に照らされて
いつもはこんな早起きはしない、大体起きるのは朝九時頃だ。
俺の家は代々漁業を営むが、ここまで早起きではないだろう。
肝心の漁業には出してもらえず、図鑑を見るのと釣りを繰り返していた。
「お前はまだまだ未熟だからな。道具の使い方からだ。」
父親からの言葉は大体漁業から遠ざけるものばかりだった。
しかし、そんな道具も扱えない俺にはとある秘密があった。
「ピー!ピー!」
白い砂浜に近づくと聞きなれたホイッスルのような音が聞こえてくる。
俺が海に近づくとそれは飛び出してきた。
「キュー!キュー!」
可愛らしい声で鳴くイルカだ、少し前から世話をしている。
海の豚というよりは海の月の方がイメージ的に合っている気がする。
発端はかなり前の事だ。
仕事についていきたいと言い出した俺は父親に叩かれた。
「危険も知らずに軽い気持ちで言うな!」
その言葉で俺は家を飛び出して、夜に輝く白い砂浜で星を眺めていた。
その日、夜空の月はもう消えかけていた。
一つ、白い砂浜に鳴き声が響いた。
「ピー」
その鳴き声に反応して俺は白い砂浜を駆け回った。声を頼りにして探し、そしてようやく俺はこいつを見つけた。
「・・・・イルカ?」。
「ピー」
俺の声に答えたように感じた。
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