魔法の本屋さん

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人間と魔法使いが共存する世界。 イギリスには人間が近づかない深い森があり、その森の奥には4千年もの間、黒猫1匹と年老いた魔女が営む魔法の本屋がある。 何故、人間が近づかないのかというと、一度入った森からは決して出ることが出来ないという噂があるから。 事実、人間嫌いの魔女が目眩ませに魔法をかけているせいで森から出られなくなった人間が何人もいた。  しかし、人間嫌いの魔女にとっては絶好の場所。 それが魔法の本屋〈ブラックキャット〉だ。 魔法の本屋とだけあって人間が営む本屋とは違い、一風変わっている。 本棚に納まりきれず、天井までぎっしりと積み上げられた本が置いてあるのは、いかにも本屋さんという雰囲気だが、この本1冊1冊には全て魔法がかけられているため時折不思議なことが起きる。 「はい。25ポンドね。まいどー」 店内にいた若い魔女が 1冊の本を手に取ると店主からその本を購入し、そのまま店内に備えつけてある椅子に座ると購入したばかりの本を開く。 すると、ポンッという音と共に本からチョコレートケーキが目の前に現れた。 若い魔女は嬉しそうに本から出てきたチョコレートケーキを掴んで食べている。 「おいしーー」 そう。この「ブラックキャット」の本は写真や絵になっているページは全て現実となって飛び出してくるのだ。 一方、若い魔女の向かいの席に座っていた年老いた魔法使いは動物図鑑を開いている。 傍には図鑑から出てきたであろう猿を撫でていたが猿だからじっとしているわけがなく、あちこち跳び跳ねるので棚の本が床に散らばった。  その光景を見かねた店主がため息混じりに杖を一振りすると、あっという間に猿を図鑑へと戻し、散らばった本も本棚に戻していく。 「気をつけてちょうだい」 「すまん」 店主に注意されて年老いた魔法使いはバツが悪そうにそそくさと店を出て行った。 そのように、魔法の本屋〈ブラックキャット〉には若い魔女から年老いた魔法使いまで幅広い年齢層の客が訪れる。 ただ、建物の本や恐竜図鑑のように店内に入りきれない写真や絵がある本は原則として店内での本の解放を禁止していた。
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