第一話

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 ここが一体どこなのか、皆目見当もつかないけどひとまず、   「誰か、助けてください」    六月も中旬に入りじめじめした日が続いている中、珍しく晴れた日を満喫する気はさらさらないが、有効活用しようとした結果。  マジでここはどこなんだろうか。  珍しく地元から出てみれば、やっぱりろくなことが無いじゃねーかよ、あのじじぃ。 「アカツキ、ここがどこだか分かるか?」 どこへなりと、問いかける。 ――んー、このあたりの地形を解析してみてるけどわかんないなー。 「そうか」  イヤホンからは予想通りの答えが返ってくる、いきなり知らない所に放り込まれるのは形容しがたい不安、というか恐怖がある。  ちなみに今、俺はあまりの不安から独り言を口にしていたわけではない。  腰のポーチと一緒に吊るしてある小型携帯端末(デバイス)の音声認識システム「モデル・アカツキ」への質問だ、答えは今の通りであったが。 「それで、人はいそうか?」 ――それなら、整備されてる場所があったからいるはずだよ。 「なら、そこまで行ってみるか。案内頼む」 ――りょーかいです。  アカツキの音声案内と眼鏡型携帯端末(デバイス)のルート表示に従ってどこか分からない森の中を進み始めた。      進み始めて十分経ったくらいだろうか、目の前には確かに人の手が加えられたであろう広場のようなところに出た。  広場と言っても子供が走り回れるような広さはない、大人が三人腕を広げて立てるかという程度だ。  だが随分と手入れされているところだ、きれいな円形の真ん中には小さいがしっかりとしたつくりの社が鎮座していて、そこから伸びるようにではなく、そこまで敷石で道が整備されている。一体どんな石材を使っているのか黒曜石のような滑らかさとほんのり透明感のある不思議な物だ。 「アカツキ、この石材何か分かるか?」 ――分かんない、どれだけ検索してみても該当するものがない。 「てことは、これがじじぃの言ってたことか」 ――そうみたいだね  まさか、あの時言っていたことが本当だったとは。
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