これからの思い出

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「お待たせー」 少し低く、よく通る声が私にかけられた。振り向こうと思うと同時に、目の前に透き通った茶色の液体が入ったプラスチックのカップが現れた。 「はい、アイスティー。ストレートでよかったよな?」 カップに少し遅れて私の前に移動した彼は、手にシュワシュワと泡を放つコーラのカップを持っていた。 「ありがとう……」 私はそう言って、彼の手からアイスティーを受け取った。それは少し汗をかいていて、水が手に触れたところを駆け抜けていく風が、ひんやりと心地よかった。 「はい、そこの熱々カップル! 今ならクレープ半額だよー! 買った買った!」 横からテレビドラマで観る八百屋さんのような勢いで、彼女の声が私たちに向けて投げられた。 孝明さんは笑いながら彼女に応えて、400円を渡してクレープを注文していた。 あれ、と私はふと思う。 彼は私の、何だっただろう。 その瞬間、一際大きな風が私を襲って、私は思わずぎゅっと目を閉じた。
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