これからの思い出

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「夢を、見ていたの」 私は彼に向かって微笑みながら、そう答えた。 「私たち同じ高校に通っていて、そこの文化祭を一緒に回っていたわ。おかしいわね、私たちは別々の学校だったし、そもそも4歳年が離れているから、一緒に通えるはずないのにね」 私は吐き出すように溜め息をついて、夢の話を続けた。 「お茶を飲んだり、クレープを買ったり、展示を見たり、後夜祭のフォークダンスを眺めたりしていたわ。展示にはね、私が妊娠した時、病院で描いた絵があったのよ。あの子の名前に込めた願いを描いた絵。覚えてる?」 「もちろん」 彼はそう言って頷いてくれた。私はなんだか嬉しくて、ほんの少し口元を綻ばせた。 「2人でそれを見ていたわ。なんでかしらね。これからあの子の文化祭に行くからかしら」 私は彼がいる方とは反対の窓から外を見た。今いる駐車場より少し遠くに校門と、それを飾るように取り付けられた、たくさんの星のオーナメントが輝いているアーチが見えた。 「私ね、フォークダンスの音楽を聞きながら思ったの。終わらないでって。終わってほしくなかった。ちょっと寂しくなっちゃったのね。私たち、出会うのが遅くなっちゃって、2人で文化祭を回るなんてこと、できなかったから」 そのアーチから視線を外し、私は目を伏せるようにして俯いた。 触れ合っていたはずの肩や手には、あの温もりは残っていなかった。
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