願望

4/8
前へ
/8ページ
次へ
ーー数日後。 職場の喫煙所は今日も盛況だ。 「ホイ。タバコ。」 空いたスペースを見つけると、先客のシュウがタバコを差し出してきた。 「ん?なんで?」 何か下心があるに違いない、と俺はシュウの顔を覗き込む。 「なんだ、もう忘れたのか? 今日はダイチの誕生日だろ。」 「ああ、そう言えば、そんな話してたな。サンキュ。」 手を挙げて軽く礼を言って、差し出されたタバコを一本拝借する。 「いくつになったんだっけ?」 「おいおい、同級生だろシュウ?24歳だよ。」 「そうか……。 24になっちまったか。」 シュウは遠い目をしながら言った。 「ああ、もうオッサンだよな。」 俺もつられて郷愁にかられる。 小学校の運動会でシュウと順位を争った徒競走。 同じ女子に思いを寄せた中学時代。 別々に進学した俺たちが、再び顔をあわせたサッカー県大会予選。 浪人した俺は、現役合格のシュウを羨んだが、 シュウは留年したから卒業年度は結局同じ。 シュウとは腐れ縁だが悪くない人生だった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加