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俺にとって本は「読む」ものではなく「盗む」ものだ。
仕事のあとは毎回本屋に立ち寄り「読書」ならぬ「盗書」をくり返している。
「欲しいものは盗む」を信条としている俺にとって本屋は情報の宝庫だ。
さまざまな本の中から必要な情報を選び出し、記憶の中へと落とし込んでいく。
しかも本屋での「盗書」行為はそれ自体が合法であり、犯罪ですらないのだ。
今回の仕事にしても元はといえば本屋から情報を盗んだことがきっかけだ。そしてあの万事休すともいえる状態から脱出できたのもやはり日ごろの「盗書」のおかげだった。
情報をあらかた盗み終えたあと、本屋の壁にかけられている時計を見た。
閉店まであまり余裕があるとは言えなかった。
俺は読んでいた本を棚へと戻した。
今日もしっかりと盗ませてもらった。
泥棒家業を続けていく限り、立ち読みをやめることはないだろう。
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