ぼくとおじさんとぼうけん

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じりじりと焼けつくような日ざしに、汗が吹き出てきます。けんとくんは、それをグイッと腕でぬぐうと、縁側から家の中へと身を乗り出しました。 「あーぁ、つまんないなぁ」 セミの声に負けないよう、けんとくんは大きな声で言いました。 畳にゆうゆうと寝転がったおじさんは、大きなあくびをしました。聞こえないふりです。すぐそこにいるのですから、聞こえないはずがありません。 「あああ! なにかいいこと、ないかなぁっ!」 「んんむむむっ」 おじさんが伸びをしました。Tシャツから白いお腹がのぞいています。おばあちゃんに見つかったら、だらしがないと怒られるでしょう。 でも、今この古い家にいるのは、けんとくんとおじさんだけです。おばあちゃんとおじいちゃんは、朝早くから仕事に出かけてしまいました。二人とも夕方には戻ってきますが、それまでは二人きりです。 「いいことって、なんだ?」 ゴロリと転がったまま、おじさんがこちらに顔を向けました。 「そんなこと、分からないけど」 小学校に入って初めての夏休みです。始まる前は、すてきなことがたくさんあるはずだとワクワクしていたのに、まだ何も起きていません。 このまま夏休みが終わっちゃう!  けんとくんは、あせり始めていました。
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