ぼくとおじさんとぼうけん

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「なんだろうなぁ、暑いなぁ」 「おじさんは、暑いと言ってばかりだ」 「けんとも暑いだろ」 「暑いけど……」 暑いと言ってゴロゴロしていたところで、涼しくなるわけじゃないと、けんとくんは知っています。おじさんは、そんなことも分からないのでしょうか。 「じゃあ、涼しくなることしようよ」 「涼しくなること?」 「海とか、プールとか、連れてって!」 けんとくんは、おじいちゃんとおばあちゃんとおじさんが住むこの田舎の家に来たきり、どこにも出かけていません。家の周りは、山ばかりです。山は、子ども一人では危ないから入ってはいけないと言われています。庭と畑のぼうけんは、もう済ませてしまいました。だって、ここに来てからもう5日も経つのです。 「海かぁ」 「海に行こうよ、海!」 「ううん、車もないしなぁ」 おじさんは子どものように、畳の上で足をバタバタさせました。 「けんとは泳げるのか? ほら、こんなふうに」 けんとくんは、ハッとしました。 「ぼく、泳げないや」 「泳げないのに海に行ったら、おぼれちゃうぞ」 おじさんの言うとおりです。どうして気づかなかったんでしょう。けんとくんは、肩を落としました。暑苦しかった空気が、急にひんやりした気がしました。
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