エロ本読む虫も好き好き

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 一冊の本をつかみとり、ページをパラパラとめくる。『至高のチラリズム!!』『小悪魔的ジェノサイドレディ』『真夜中からはテクニシャン』と魅惑的な見出しと女性のグラビアポーズが並ぶ。  一昔前のエロ本だった。ちょっとした掘り出しものである。こんなものまで売っているのかと下卑た笑みを浮かべ、少年は興味深げにパラパラとページをめくる。  袋とじの部分だけ切りとられていたが、それでも広がるピンク色の世界にしばし時間を忘れ、そのまま立ち読みする。 「こんなところでもエロ本の虫は健在なようね。それとも、今は金食い虫かしら?」  ゆえに背後から声をかけられたとき、少年は心臓がとまりかねないぐらいに驚き、相手の顔を見てさらに驚いた。同じ高校に通う桃源今日子だった。  麦わら帽子に白いワンピースというマンガやアニメでしか見たことのないような出で立ちで、冷たい視線を向けている。 「へっ。このクソ暑い中、わざわざ嫌味をありがとよ」  少年が皮肉交じりに言い返すと、今日子も負けじとつづける。
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