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本棚から下卑太が抜いた本はハードカバー本だった。高級そうな革表紙に『愛はエクストリームスポーツ』というタイトルが印字されている。
「ッ! それは!!」
瞳を無垢な幼児のように輝かせ、今日子はわあっと口を開いた。
「美しくも卑猥な文章表現に悶絶する読者が続々出たから、初版しか出版されなかった幻のポルノ文学じゃない」
おそるおそる受けとり、今日子は裏表紙を確かめる。手書きの値段が書かれたシールに思わず目を見張った。
「高いわね。さすが幻の本」
サイフを開き、未練がましく本に視線を落とす。
「まあ、そうしょげるなよ」
下卑太はチラチラとあたりを確認すると、今日子のサイフからお札をすっと抜いた。
「な、なにするの。見損なったわ! 本当に金食い虫になったのかしら?」
「馬鹿言え。本の料金をもらったんだ。お買いあげありがとうございました」
「え? でも」
「ここの店主はいい加減でな。料金設定もろくに覚えてねえんだ」
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