失われた本を求めて

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 では早速行ってみよう。まず店構えだけれども、意外にこじんまりとしたものだ。物理書籍終末期こそ、大型店舗ばかりに席巻されてしまったらしいが、全盛期は小型から中型の店が主流だったと言う。  外観は清潔な感じで、ガラス張りである。外に面した壁面には雑誌やお勧め書籍が、表紙が見えるようにディスプレイされており、いわゆる「立ち読み」をしている人たちの姿も窺える。繁盛しているようだ。  中に入ってみよう。自動ドアが開くと、店員の元気な挨拶が迎えてくれる。皆エプロンのような制服を身に着けていて、女性の割合が多く、見栄えがいいものである。  まず入ってすぐ左手を見ると、洒落た椅子とテーブルが置いてあり、老若男女がコーヒーを啜りながら本を読んでいるので、初めての人は驚くかもしれない。  当時の店には、カフェも併設していたのである。電子書籍が台頭してきたころ、実店舗がネットショップに対抗するにはどうすればよいかと考えられた結果、快適性を付け加えたらどうかという事でこうなったらしい。  セルフサービスの店もあれば、店員がサーブしてくれるところもあり、確かにインターネット上では味わえないサービスに、客たちの顔も満足そうに見える。  それではいよいよ本棚を見てみる。店を入ってすぐ右に行くと、まず分厚い本の差し込まれた棚が現れる。手に取ってみると案外軽く、紙の材質も安っぽい。表紙からも窺えるように中は漫画で、やはり今も昔も世代を問わず人気らしい。  次の棚は雑誌が中心だ。ファッション雑誌が、表紙を前にして並べられており、床には漫画雑誌が同じく表紙を上にして、塔のように積み重ねられている。いわゆる「平積み」という置き方で、これも「売れ筋」の証拠と言ってよい。  ファッション雑誌コーナーを過ぎると、車や釣り、旅やギャンブルといった趣味の本が続く。雑誌ばかりのようだけれども、中ほどには文庫や単行本のコーナーもあり、ベストセラーはむろん平積みにされている。  他に目立っているのは、いわゆるビジネス書や自己啓発書とかいったもので、当時はこれもよく売れていたのだろう。ざっと見ると確かに情報が一目で視野に入り、脳が刺激を受ける気がする。
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