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「は、早いね……。ま、でも、そうだよね。そういう相手は共感しずらいよね。完璧超人には。だって、そんな人、中々いないもん」逆に、と彼女は言った。「成績は悪く、運動神経もない。だけど、向上心だけはあるBくん。この二人だったらどっちに好感が」
「Bかな」
「早いなぁ。……ま、説明しやすくて助かるよ。つまり、こういうこと。共感って」
ん?
頭に疑問符が並ぶ。
「待って。どういうこと」
「自分とは全く関係ないことって理解できる? さっきのAくんみたいに」
あぁー、と俺は思わず反応してしまった。
まんまと彼女に踊らされているような、しかし、しっかりと彼女の言いたいことが分かった。
「共感。それが、インクの染みでしかないはずの小説が、芸術になるものだと思う。これまできみに紹介したのって、きみの心境に近かったものだよね?」
「あ」
そういうことか、と俺は納得した。
彼女は他人を見る目がすごいあり、それが本を紹介してるのに役立ってるとは感じていたが。そうか。何より、小説をおもしろいと感じる仕組みを理解していたのか。
観察眼だけじゃ足りない。観察眼があった上で、彼女は何を勧めればいいかを理解していた。
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