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OP
俺はあまり本を読まない。
だが、読みたくないわけじゃない。
むしろ、本を読みたいと思っている。本を、好きになりたいと願ってる。
理由は分からない。何故だか、本を好きな人に憧れのようなのを抱いている。
学校からの帰り道。
ひざしが眩しい夏は夕日の到来も遅く、一瞬で終わる。
そんな希少な時間を、俺は歩いていた。ただ歩いていた。
しばらくすると、あ、この店こんなとこにあったんだと驚いた。探そうとしても、一向に見つからなかったあの本屋。
「……出口書店(でぐちしよてん)だっけか」
井口や、出川だったら、まだ分かるが。出口。
出口?
出口書店。
どういう意図でつけたのか分からない。何故か、やたらと印象的に感じる。それは名前のせいか。それとも、この店の持つ魅惑のせいか。
「…………」
噂では、この本屋では書店員におすすめの小説を紹介されるという。それしか売ってないお店なんだとか。
これがまた、大好評らしい。
どういうカラクリかは不明だが、その紹介された本は必ず喜ばれるんだとか。書店員に感謝し、何十年も通い続けてる客もいるとか何とか。
だが、このときの俺は店に入ることなく、そのまま帰った。
だって、もし書店員に「あなたにおすすめの本はありません」と言われたらショックだから。
「………」
何もない人間だと認めるのが、こわかったから。
001
中学のクラス替え。
大して付き合いの長い相手はおらず、ま、適当に誰でもいいやと思ったが、まさしく、誰でもいいや、のご期待に答えて知人友人とは離れてしまった。
その代わり、奇妙な人物といっしょになった。
彼女のあだ名は、本屋(ほんや)らしい。
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