第1章

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「図書委員にやりたい奴いないかー」  クラス委員長するのと同じく不人気な委員。ま、図書委員の仕事はめんどいからな。図書室の受付係をやらされるのだ。アルバイトじゃあるまいし。しかも、無給で。部活ある奴は無理だし、どうしても帰宅部に目線が向けられる。俺の学校は帰宅部はあまりおらず、各々やりたいことがあって部活に勤しんでるらしい。俺には理解できないが。  図書委員になったのは、俺と本屋だ。 「よろしくね」  長い髪を三つ編みにした少女。眼鏡をかけて、よく漫画にいる典型的な文系少女のよう。だからなのか、彼女のあだ名は本屋。人によっては嫌がりそうなそれを、彼女は自ら名乗っていた。 「みんなからは本屋って言われてるの。えへへっ」  若干、嬉しそうな顔をして。  002  何で本屋と言われてるのと聞いた。返ってくる答えはいつも本読んでるからだと思ったが、予想とは違っていた。 「あ、あたしの家、本屋なんだ」  本屋の娘だから本屋か。また、随分と安直な。  うちの図書室はこれといった特徴はない、普通の図書室だ。  俺達は今、図書室で受付の係をしている。  教室と同じぐらいの広さがあり、ベランダに続く窓はふさがれ、その代わり四方のほとんどを本棚で埋めている。  本棚には日本語で書かれた、もしくは翻訳された本が並ぶ。中には若者向けのライトノベルや、漫画本もあったりする。  漫画本は、最近のジャンプ漫画があるわけじゃなく、三国志や手塚治虫のブラックジャックがあった。これも、当時は学校に置かれるなんて考えられなかったのだろうか。今じゃ、むしろ高尚なというか、教養が身に付くものとして扱われる。 「知ってるかな、出口書店っていう。変わった名前の」 「………」  出口書店。  まさか、このときあの店が出てくるとは、と油断していた。絶対に縁がないんだろうな、とどこかで確信してたのに、だ。  結局、確信でもなんでもなかったわけだけど。  ……だって俺は、本を読まないし。本をあまり読まないし。  本を読む人とは、無意識に境があると思っていたのだ。  絶対に、飛びこえられない境界があるとばかり。 「……じゃあ、普段から本を読むんだ?」 「うん。そうだね。暇さえあれば読んでるね。というか学校でも読んでるだけど」  あまり他人を意識してないから知らない。
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