静かな人々

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ダイニングルームに入ると、母親が目玉焼きを焼いているところだった。 「あら、遅かったわね」 「うん、目覚ましかけるの忘れた」 「土曜日だから別にいいわよ」 はい、と平皿においしそうな黄身ふたつの目玉焼きが乗せられた。 「あの、これ……」 嫌なことはさっさと済まそうと、封筒を差し出す。 「ああ、そういえばまだ見てなかったわね」 母親が通知表をパラパラとめくり始めた。 せっかくの好物の目玉焼きの味が全くしない。 「……なるほどね」 ぱさっと通知表がテーブルに置かれた。その音にびくりとする。 「あの、私、もっと発言するよう頑張るけど、でもシャイって悪い事では……」 「外向的な人は他人と話しながら考える。内向的な人は一人になって考える。でもその考えることの質に良し悪しはない、でしょ」 はい? 「昨夜Proseの読書会に行ってたの。そこであそこのご主人の息子さんにこれを勧められたの」 そう言ってテーブルの上に置かれた本は、昨日ジョーが語っていたスーザン・ケインの本だ。 「読書会の常連さんは皆この本の事を知っていて、いろいろと話したわ。ねえ、ジュン、」 母親はジュンの目の前の椅子を引いて座った。 「私はもったいないと思ったの。わかっているのにそれを発言しないから評価してもらえないなんて。だけど……。そうね、あなたなりの “発信の仕方” があるはずだから、それを考えましょうね」
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