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その本屋さんは前に母親と訪ねたことがあった。
母親は本好きで、Proseのこだわりのある本の陳列の仕方が好きだと言っていた。
隣のカフェで時々行われるテーマ別の読書会にまで参加しているようだった。
初めて入る店内は紙の匂いなのかインクの匂いなのか、何か独特の香りが漂っていた。
「いらっしゃいませ。何をお探しでしょうか?」
「あら、ジョー。この前話題にしてた英作文の本は見つかって?」
母親がジョーと呼んだ青年は大学生くらいに見えた。後で知ったが、この本屋のご主人の一人息子だった。
ぼうっと彼の方をみていると、暗灰色の瞳と視線がかち合ってしまった。整った顔立ちに似つかわしい、吸引力のある瞳だ。
きゅ、と体の奥で何かが疼いた感覚はジュンが今まで感じたことのないものだった。
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