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バスの窓から行く先にその馴染みの看板が見えた時、ジュンの足は迷うことなく立ち上がり、降りるためのボタンを押していた。
母親に言わずに違う街で寄り道するなんて初めてのことかもしれない。
(あのお兄さんいるかな)
なんでだろう、脈が速くなってくる。
クラスで発言しようかと迷っている時のとはまた違う感じだ。
……いた。
カフェの方を見ると彼は何人かの同じくらいの年の女の子たちと談笑していた。
なんとなく面白くなくて、どさっと学校のカバンを丸テーブルの上に乱暴に置いてしまった。
その音に気が付いたのか、こちらに近づく足音がした。
「今日はひとりなの?」
……え?
この人、私の事を覚えていてくれたんだ。
「あれ、どうしたのっ!?」
焦る声に頬を触ると、頬をつぅーと伝う雫に今更のように気が付いた。
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