大好きな君に送る本

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大好きな君に送る本

その本屋は高校に行く途中にある坂の人気がない場所にポツンと寂しく佇んでいた。 木造でできたお店は時代を感じさせていて、看板にはただ『もののべ本屋』とだけ汚れた字で書かれて いるばかりだ。 普通、本屋と言えば入り口に平積みの週刊誌が置かれている事が多いのだけれど、その本屋には平積み の本もなければ、本当に開いているのかどうかすら怪しい木製の両開きになっている引き戸があるだけ だ。しかも、木製の引き戸は硝子張りになっている癖にクリーム色のカーテンが掛けられているせいで 中の様子を見ることもできない。 こんな本屋、普通なら潰れてしまう。それなのに、引き戸の前には学校に行くときには『OPNE』と札 が掛けられ、学校が終わってアルバイトからの帰り道には『CLOSE』と札が掛けられているのだから、 お店としては一応、行われている様子だ。 私は本が嫌いだ。特に小説が嫌いだ――。 別に活字を読むのが嫌だとか、難しい文章が嫌だとかそういうわけではない。私が本を嫌いなのは本に 友人を取られたからだ。 夏を思わせる蒸し暑い空気がセーラー服に纏わり付く。ただでさえ不快な空気なのに、その本屋の存在     
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