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が嫌でも私と友人の遙香との関係を終わらせた出来事を思い出して胸の内がざわつく。
七月も半ばになったからか朝日は既に高い位置にあって、私の影を長く伸ばしている。
坂道を上りながら、横目で木造の古くさい本屋を見ては嫌な思いに眉に皺が寄る。フイッと猫の様に私
は本屋から視線を外して学校へと歩いて行った。いや、歩いて行こうとした。のだけれど。
「え……」
私の歩みは自然と本屋の目の前で止まる。いつもは誰の来客も歓迎しないような本屋の引き戸が今日に
限っては少しだけ開いていた。高校に入ってから三年間、全く中の様子を見せることなく閉まっていた
扉が何故か今日は開いていたのだ。
その違和感と好奇心に私の歩みは学校へのではなく、本屋へと自然に向けられていた。クリーム色のカ
ーテンで遮られた、見たことのない店内。本は嫌いなのだけれど、その秘密的な雰囲気にあらがうこと
は出来ない。
何度か風が吹くように私の身体を乱暴に揺らす。
そっと開かれた引き戸の隙間から私は釣り目がちな瞳を覗かせる。仄かに本屋のはずだけれどラベンダ
ーの香りがする。そして私の目の前に映った景色は木で出来たレトロなアンティーク風の本棚に、しっ
かりと収められている本の群れだった。そのどれもが同じデザインで、誰かの全集なのだろうか? と
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