2. 文化祭

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2. 文化祭

 文化祭当日は高く抜けた空から日差しが降り注ぐ、イベント日和。林立する社屋に囲まれた多目的広場に、色彩豊かな屋台が並んだ。  毎年恒例の行事として開催されてきたこの文化祭。  既に四半世紀近い開催実績の甲斐あって周辺地域における認知度も高く、当社のホームページ、ご近所でのポスター掲示やチラシ配布くらいの控えめな広報しかしていないのに、早くも去年を上回る来場者数が見込まれている。  金魚すくい、くじ引き、かき氷にアニメキャラクターのお面。無難な出し物が並ぶ中で、異彩を放つ屋台が二つあった。  それは、企画部が担当する「イベリコ豚の握り寿司」と、我が財務部の「国産天然うな丼」だ。  一悶着を経て大変残念な事態になっている企画部の屋台のことはまた後述するとして、我が財務部の屋台は大変な盛況。長蛇の列が出来ている。さすがは古くから日本人に愛されてきたうなぎ様、と言ったところか。  本日の気温は軽く三十度超え。  提供する食材が「うなぎ」ということで、屋台のテント色も真っ黒ならば、担当する財務部社員に配布された揃いのTシャツの色もやはり真っ黒。  おまけに炭火七輪でうなぎを焼いて、それを炊き立てご飯に乗せて提供するものだから、全員が文字通り汗塗れで立ち働いている。
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