2. 文化祭

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 神崎さんの呼び掛けに、入社二年目の若手社員が振り返る。  計量器を指し示しながら、うな丼の盛り付け方を説明する神崎さん。  よく見ると、規定量のところにあらかじめマーカーが引かれているじゃないか。  マズい。オレがこれまでテキトーに盛り付けてきたのがバレバレだ。 「あー、神崎さん? その、すまなかったね」 「いえ、人には向き不向きというものがあります。それに、済んでしまったことは仕方ありません。いまから最善を尽くしましょう」 「君と話していると時々、どちらが上司だかわからなくなるよ」  鉄串を器用に操ってうなぎの焼き加減を調整していた手の動きが、ピタリと止まった。マズい。オレはまた何か神経を逆撫でする様な事を言ってしまったのか。  数秒間の沈黙を経て白い腕がスッと上がり、真横を指し示した。  業務で電卓を日常的に叩く為に短く切り揃えられた、飾り気のない五指の爪。  今日はそれらにパールホワイトのネイルが薄っすらと施されていることに気付き、神崎さんもまだまだ若手だということにいまさら思い当たる。入社三年目にして早くも財務部のエースとか呼ばれてるから、普段はすっかり忘れてしまっているけれど。     
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